1972年ヒロシマ 原爆同等の被害という封印設定 #ウルトラマン  #特撮  #ヒロシマ

 広島でG7サミットが開かれ、各国首脳が原爆資料館を訪れたことで思い出したお話です。 
 1972年4月、「帰ってきたウルトラマン」の後を受け、昭和の第2期ウルトラマンシリーズ第2作「ウルトラマンエース」第一話「輝け!ウルトラ5兄弟」が放映されました。
 当時、私はもうそろそろ怪獣から離れだす、中学1年生だったと思います。兄にはいつまでそんなの見てるみたいに言われたのを覚えています。
 この「エース」という番組は、難産で、呪われたと言われるほどトラブルも多く、設定も直前で変わり、路線変更もあった作品です。長くなり、多少端折りますが、初めてウルトラ兄弟という設定が現れた記念すべき作品ですが、元々円谷も連続でこの枠を受け持つのではなく、1回休んで次の作品をじっくり作ろうという案すらあったようです。
 主人公の男女がタッチしての変身で、敵は怪獣よりも強力な生物兵器の超獣、そしてウルトラシリーズ初のシリーズを通しての悪役で超獣を送り込む異次元人ヤプールというチャレンジングな設定でした。
 初代のマンやセブンに比べ低調と言われた「帰ってきたウルトラマン」を超えようという意欲には満ちていましたが、実際には迷走したようです。
 当初はセブンのように「ウルトラ」のあとはマンがつかない「ウルトラエース」という題名の予定でしたが、商標の関係で使えないことで急遽、「ウルトラマンエース」と言う名前になり、これがウルトラ兄弟にもつながりました。エースだけ何となく造詣はウルトラマンには似ていません。後の兄弟も商標問題は無ければ「ウルトラタロウ」や「ウルトラメビウス」などになったかもしれません。
 そして、何と撮影がスタートして直ぐにヒロインが事故で大怪我を負い降板となります。主人公南夕子さんを演じたのは、急遽の代役さんなのです。
 そして、やはり男女合体変身というのがそもそも分かりにくいし、子供が遊びで真似しにくいという問題もあり、初回以降は視聴率は低迷したようです。後半のテコ入れ、路線変更で男性だけの変身となり、そのヒロインも唐突に月星人だった月に帰るというトンデモ後付け設定で降板させられます。後半好調だった前作「帰ってきたウルトラマン」の流れを受け初回はウルトラ兄弟というコピーもあり20%後半を叩きましたが、以降大台はなく低迷します。前番組で心躍った、マンやセブンの兄弟のゲスト登場も、今作ではゾロゾロ出てきてもかませ役に回され不満と不信が溜まる内容で子供も離れたと思います。

 ここまでは、昭和特撮ファンには比較的有名なエピソートです。他にもいろいろありますが割愛して本題の広島の件。
 これはこの「ウルトラマンエース」第一話「輝けウルトラ5兄弟」で、男女二人の主人公、広島県福山市のパン屋の配達運転手で実直で熱血漢の男性と、福山市民病院の優しく元気な看護婦(当時の名称)の女性が、超獣の攻撃に街が襲われ際、「ウルトラマンエース」に助けられ、エースへ二人で変身できるアイテムを貰い、新しい地球防衛組織TACに入隊するというところです。
 初回としては盛りだくさん、てんこ盛りでツッコミどころも多い感じで、不完全というのか、何だか子供心にも消化不良の印象はぬぐえませんでした。
 その、テンコ盛りの第1回なのですが、なぜ、広島県福山市?という実際の地名でローカル都市になっているのか不思議です。後でヒロインの夕子が月の出身だとされると、ますます「何で福山?」という話が出ます。
 実はここに封印された部分があるのです。次にベロクロンが現れるのは首都圏K地区(なぜかイニシャル)、地球防衛軍が壊滅状態にされ、新たに結成されたTACの竜隊長が、「地球防衛軍を壊滅させたベロクロンはもはや、怪獣とは言えない異次元人が送り込んだ生物兵器、怪獣よりも強い超怪獣、超獣だ」と語るセリフがあります。
 その前に実際に竜隊長がすでに収録した場面のセリフは「広島市を襲ったベロクロンは、広島に原爆と全く同じ規模の被害を与えた、原爆を落としたのと同じ、異次元人の悪魔の所業だ」細部は違うけれど大意はそういう内容で脚本通りだったそうです。
 広島の市民に原爆を、怪獣番組で想起させるのはケシカランと言われたか、原爆投下を悪魔とよぶのはアメリカに忖度したのか、何か他に事情があるのか、この部分は封印され、急遽広島県の第二の都市福山市にお鉢が回りました。
 広島の原爆ドームが崩れ、このセリフがあれば、衝撃で、社会問題的なものも訴えた、かなりハードな展開、重い内容を抱えて新機軸の第一話となっていたはずです。昔なら許されたこともあれば、子供向きにそこまでは遠慮されたこともあるものです。
 被爆したケロイドを連想させる宇宙人を、登場させて謝罪して永久欠番になったウルトラセブン第12話の件もあり、設定を慎重に再考したとも思われます。
 原爆ドームを怪獣が壊すことはやはりタブーだったとも思いますが、世界の核を取り巻く状況もまた50年を経て不穏でもあります。現実世界にはエースもヒーローもいない上、やはり政治的な大人の裏事情であたふたと庶民は振り回されるだけです。

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