1975年、映画「新幹線大爆破」の頃

 昔の映画を観ていると、当時の鉄道の車両や風景、その役割すらがその時代らしく出てきて驚きます。
 松本清張の「点と線」「張り込み」などは新幹線以前の昭和40年頃の長距離は夜行列車が当たり前の時代が映像に残っています。
 「新幹線大爆破」はようやく山陽新幹線が博多まで開業した年の作品です。1両のみの禁煙車が登場するのは翌年からで、乗客が平気でタバコをくゆらせていました。もちろん丸いゼロ系列車で2階建ての100系は1985年の登場です。


 高倉健、丹波哲郎、宇津井健、千葉真一、志村喬ら当時の東映のオールスターキャストでの娯楽サスペンス大作です。
 「暴走機関車」「夜空の大空港」にサスペンス部分などでアイデアを得ているところもあり、また後の映画、ドラマにオマージュや影響を与えた要素も多い映画でした。
 撮影協力を交渉したところ、安全を謳い文句にしていた国鉄は、刺激的な映画のタイトルに難色をしめし、協力をしていないのでセットやミニチュア、はめ込み合成になっているところは映画屋さんの意地が見え、愛嬌のあるところもあります。それでも指令室や東京駅などをかなり大がかりなセットで作り、実際に犯人が脅しに爆破するSLを購入するなど、当時ならではの破格のお金のかけようです。
 興行的には、まだ新幹線が全国に及んでいない時代で、面白いお金をかけた映画なのに元が取れるほどヒットはしなかったようです。映画を観たファンにはウケたようで、評価は高かったようです。
 鉄道ファンからもマニア的な厳しい指摘は多くあり、実際にはあの設定では爆破してしまうだろうとの指摘も問題もありましたが、結局面白かったとの評価はあったようです。
 航空機パニックなみに、お医者さんが乗車していないかの放送があったり、まだまだ新幹線は高値の花だった時代で、高度成長への暴走が止まらない世相でした。
 当時、爆破テロなどの模倣犯を心配されて、国鉄が上映中止を要望したほどでした。
 ほとんどの電車が完全禁煙になり、地方にも新幹線が走り出した今に至るまで、爆破などの大事故は起こっていないことは、国鉄とそれを引き継いだJRの鉄道マン、関係者の努力は見逃せません。 

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