映画レビュー:「青春18×2君へと続く道」全世代に送る青春メッセージ

 このタイトルが旅行好き、鉄道好きにはあの「キップ」を連想します。
 私も勇んで、初日主演俳優と監督の挨拶ビューイングのある時間帯に映画館に駈けこみました。
 日本と台湾の美しい情景を舞台に、初恋の記憶と人生の岐路に立たされたシュー・グァンハン演じる主人公の旅を描いていく映画で、ちょっとお涙頂戴、ハンカチ必携の泣けるストーリーでありながら、どの世代にも力と希望が湧くようなワクワクの旅もの、青春ものの映画です。
 鉄道好き旅好きでも、そうで無い人も、必見の台湾の電車から、日本に来て江ノ電そして、JR東日本の珠玉的車窓のローカル線、飯山線や只見線が登場します。

 少しだけネタバレ混じり、公式で明かされている範囲程度からの感想ですが、18の意味はJRの企画切符ではなく、本当に年齢の18歳の意味で、✖2というのは主演の二人というだけでなく、リアルタイムではその倍の年齢になった主人公が18歳の時代を回想するという意味も含んでいます。
 実際に旅の途中で出合った道枝駿佑演じる18歳のバックパッカーに、年齢を尋ねられ自分は2倍だと返す場面があります。
 大都会の品川から、鎌倉、松本、飯山、長岡、只見と旅をしながら回想が挿入されます。学生時代に立ち上げたゲーム会社を彼は大きくして、結局は追われてしまったようで、18歳の時代の初恋の相手の絵葉書を頼りに感傷的な旅です。回想での初恋相手、清原果耶演じるアミと仲間たちと過ごした時間は甘く楽しく切なく描かれます。
 今流行りのチートなタイムリープではなく、ただ過去の思い出の回想との輻輳だけですが、見ている方にも、36歳の主人公が果たして時を隔てて、初恋の人と再会できるのかは想像できる部分はあります。
 ミステリではないので、叙述的(映像的)トリックも、視点のバラつき、アンフェアも評価の対象ではないのですが、見事に伏線回収され、それでもまた希望を持って次の青春をあるこうとする姿に「いいな」という終わり方です。挿入されるミスチルの音楽も幅広い世代にいいなと思わせます。
 鉄道でトンネルを抜けて「雪国」の情景が現われる時、道枝君が川端康成の名作を知っているのにも驚きですが、物理的なカメラではなく静かに「心の(人生の)シャッターを押しましょう」という感じのセリフもインスタ全盛の時代になかなかの名言でした。
 清原さんはほぼ台湾の場面だけなので、黒木さんや道枝君らとほとんど絡みはないのに、談笑しているオフみたいな初日挨拶は考えれば面白いです。黒木華さんは、ネットカフェの店員という脇役、最近のドラマでもいろんな役を好演していて、正直清原さんよりは役者としての幅も奥行きも格も上だなとは思いました。
 本人もゲーム開発者ですが、松本、飯山線、長岡、只見とそれぞれゲームで情報をくれるような人と出会いながら、主人公が進んでいくのは現実にはそんなのありかとツッコミたくなりますが、ゲームのような面白さでもあります。
 若い人も若い頃を思い出す人も十分に楽しめるだろうという感じの映画でした。

やはりみんな世間は言いたいことが言えない

  半沢直樹も日曜日夜に、サラリーマンにとっては明日の仕事を思い出しながらもスカッとする爽快なドラマでした。同じ原作者とは言え、女性版半沢直樹で二番煎じのさらにリメイク版で先週から「花咲舞が黙ってない」が放送されています。
 同じパターンで銀行の不正を追及し、主人公は過去の慣習も「できないと思いこまず、誰かが声を上げないと変わらない」とポジティブ名言をし、今流行り「キックバック」も追及します。
 こんなに言えるのは、本当の会社じゃない荒唐無稽すぎるとも言われそうですが、やはり一つ一つのことに、一人一人が「黙ってない」で変えていく速度は鈍り、もしくは止まったままです。
 不正発覚で瀕死の業績にある会社や某国政政党も、何人も出てきた「半沢直樹」や「花咲舞」の話を聞かず握り潰してきた報いでしょうか。
 それを言い出すと、いろんなところで古い慣習を打破できず老害とも呼べる人が禅譲して優待しないで権力にしがみつくことにより、若い人が生き生きと力を発揮できないようになった日本という国の病巣さえ見えてきそうです。
 テレビを見てキャラを楽しむだけでなく、それぞれの立場で正しいことを「お言葉ですが、、」と前置きしても言いやすい場所にしないとと思います。
 

「虎に翼」 寅子にも負けず 社会の変化

 このトシで家で六法を置いて勉強するとは、夢にも思わなかった私の机に今の現実です。朝ドラヒロインに負けずに勉強です。
 先週からの朝ドラ「虎に翼」ではヒロインの母親役石田ゆり子が娘の決意と「時期尚早」との言葉に逆切れし、振袖の替わりに六法を書店で購入する場面があり、今週から伊藤 沙莉演じる寅子が法曹界に進むのでしょうか。
 私自身は、今の時代なので職場でカンタンに六法はじめいろんな書籍を貰ったり、ネットで手に入れられる恵まれた時代です。そして、働く周りの半数は女性であり、昨年卒業した同じ大学の法学部出身という女性もすぐ横にいますし、今年裁判官になったピカピカの判事補、司法試験に受かった司法修習生もやはり半分女性の時代です。
 産休明けの若い女性の裁判官も限られた時間ですが、働いておられます。そういう面では戦前、昭和のはじめ、戦後直ぐぐらいとは時代が変わったとはつくづく思います。
 

 そして、女性の生き方、価値観、ドラマのネタバレになりますが、当初ヒロインの母親は娘が学問に秀で、成績も良く勉強熱心なのはわかっていながら、女性は馬鹿の振りをしてでも、お見合いをして結婚して家に入り子供を作っていかないと幸せになれないと譲らない。失敗すると、とてもみじめになる危険があるからと古い価値観、戒めを押し付けていました。
 

 ただ、一見古い考えにも思えますが、この考えがほぼ絶滅危惧種になった現代、子供を自由にさせ過ぎて育てて、結局は若い世代で仕事も家庭も子育ても十分にできないままの人間が増えているような気がします。人口が右肩上がりの時代では中途半端な人間が多くても良かったのですが、今はそれが少子化、人口減少に直結します。
 女性差別して、優秀な方だけをというと、今の時代はすぐ文句を言われ炎上しますが、女性の中にも、昔のように結婚して子供を産んで家庭を守っていくだけの生き方でいいと思っている人もいるはずです。いろんな職業の女性進出を描く朝ドラ的な考えが、逆に伝統的な考えを差別し追いやり結局は結婚し無い人が増え、少子化にもつながっていくのではとさえ思います。
 女性が能力もあり、ともすれば男性よりも優れている人は多くいます。それでも子供を産んで母親として育てることは女性にしかできないし、それがなくなると人類は減り続けることになります。この大前提を学んで、仕組みとして、産休、育休、保育園や手当があるということを男も女も肝に銘じないといけないのです。
 
 女性が働くこと、自立すること全てが少子化ということではありませんが、何かこのあたりに少子化対策のキーがあるのではとは考えます。

 他に勉強することも多すぎるので、これ以上は他の人、AIにでも考えてもらいましょう。
 
 

1975年、映画「新幹線大爆破」の頃

 昔の映画を観ていると、当時の鉄道の車両や風景、その役割すらがその時代らしく出てきて驚きます。
 松本清張の「点と線」「張り込み」などは新幹線以前の昭和40年頃の長距離は夜行列車が当たり前の時代が映像に残っています。
 「新幹線大爆破」はようやく山陽新幹線が博多まで開業した年の作品です。1両のみの禁煙車が登場するのは翌年からで、乗客が平気でタバコをくゆらせていました。もちろん丸いゼロ系列車で2階建ての100系は1985年の登場です。


 高倉健、丹波哲郎、宇津井健、千葉真一、志村喬ら当時の東映のオールスターキャストでの娯楽サスペンス大作です。
 「暴走機関車」「夜空の大空港」にサスペンス部分などでアイデアを得ているところもあり、また後の映画、ドラマにオマージュや影響を与えた要素も多い映画でした。
 撮影協力を交渉したところ、安全を謳い文句にしていた国鉄は、刺激的な映画のタイトルに難色をしめし、協力をしていないのでセットやミニチュア、はめ込み合成になっているところは映画屋さんの意地が見え、愛嬌のあるところもあります。それでも指令室や東京駅などをかなり大がかりなセットで作り、実際に犯人が脅しに爆破するSLを購入するなど、当時ならではの破格のお金のかけようです。
 興行的には、まだ新幹線が全国に及んでいない時代で、面白いお金をかけた映画なのに元が取れるほどヒットはしなかったようです。映画を観たファンにはウケたようで、評価は高かったようです。
 鉄道ファンからもマニア的な厳しい指摘は多くあり、実際にはあの設定では爆破してしまうだろうとの指摘も問題もありましたが、結局面白かったとの評価はあったようです。
 航空機パニックなみに、お医者さんが乗車していないかの放送があったり、まだまだ新幹線は高値の花だった時代で、高度成長への暴走が止まらない世相でした。
 当時、爆破テロなどの模倣犯を心配されて、国鉄が上映中止を要望したほどでした。
 ほとんどの電車が完全禁煙になり、地方にも新幹線が走り出した今に至るまで、爆破などの大事故は起こっていないことは、国鉄とそれを引き継いだJRの鉄道マン、関係者の努力は見逃せません。 

大河ドラマ終了で1年の終わりを感じる寂寥

 テレビ離れの時代と言われながらも、元祖テレビっ子でドラマウォッチャーでした。NHKも内情が暴露されいろいろ問題を知ると最近はかなり嫌いになりましたが大河ドラマに関しては1年もかけて歴史上の人物を追うという、民放ではできないことをやり続けてますので、何となく1年見続けました。子供や若者時代から描かれた英傑が、年末に来ると老境を迎えるのが何とも時の移ろいを感じ寂寥、年の瀬を覚えます。

 ドラマとして良くできている内容、優れた役者、伸び盛りで旬を迎える人や、年齢を重ね上手くなるベテラン俳優もおられます。思い入れをしたドラマが終わると民放の1クール10回3か月ほどは短いようにやはり思います。
 ジャニーズ問題が大きく騒がれた年で、今年は大河ドラマの主役家康も、準主役の信長もジャニーズ系でした、どうする家康というかどうしようかとNHKも悩んだでしょう。ジャニーズ系がしぼむとイケメン枠でいうと、今回本多忠勝を好演した山田裕貴くんのような戦隊ヒーローやライダーなどの特撮系の俳優、舞台やミュージカル系からもチャンスは広がるでしょう。
 毎クールのように顔を出す売れっ子も男女を問わずおられます。役作りも大変でしょうが、見る方の感情移入がファンでさえついて行けないこともあります。
 昔に比べて、人気俳優をNHKが1年以上も抑えきるのは主役以外は無理になりました。朝ドラでさえ半年とはいえ、すでに売れっ子を主演にしますから、サブの登場人物枠を増やし主演クラスの負担を考えている感じがミエミエです。
 そこらあたりで、脚本に制限がかかり面白さが半減になります。
 時代モノも、視点が散漫になり、家康の物語でも、織田や武田、真田、豊臣の家の中で時間を割きます架空の人物もご都合で登場します。いくら大河、歴史とはいえその時代だから活躍した人物を総花で出せば、人物の掘り下げは浅くなります。
 オールスターキャストとなり勝ちなとくに戦国の大河ドラマですが、武将もお姫様も多いの、今度は誰がとか楽しみにもします。 
 。
 リアルさや重厚さはなくなっていますが、そもそも言葉など昔のことや方言など再現もできないし誰にもわかりません。NHKらしい採算度外の豪華なキャストを組めるところが、民放と違う楽しみではあります。
 季節感や、人間の成長が味わえるので、来年以降見るかは迷うところです。
 民放も個性的なドラマも増えました。その10月に始まったクールの民放のドラマも次々と終わり、年末年始の長時間のうんざりする特番の時期を迎えると、何だかんだあった1年が終わるのを感じます。
 仕事も日常も我々はそれぞれ12月31日まで続くのです。心身を整え乗り切りたいです
 

ワンテンポ早いと残念な人はいる ADHD的な人へ

 「一秒先の彼」という、SF的な設定もあるラブコメディを観ました。
 感想はネタバレになるので、レビューではありません。
 人より早く行動しようという思いが強い人はいますね。私もどちらかというと、慌て者で他人の話をゆっくり聞かないで、あるいは指示をよく読まないで動いてしまったり、話してしまったりします。
 トークが途切れず面白い人は、お笑いとかで才能として見られますが、一般人が人の話をよく聴かず合いの手を入れたり、自分の話ばかりするのは、いつの間にか嫌われたり、疎遠にされイジメられたりします。
 病的なものか、単なる性格なのかまでは境目が難しいですが、ADHDに分類されるような方は実際には多いです。
 ADHDは、「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」とも呼ばれ、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)といった症状が見られる障害です。
 職場などでも、周りの理解がないと誤解を生みやすく、苦労する人もいますし、環境などの条件が合えば、天才型で才能を十分発揮するケースもあります。
 この映画の二人のように、ややおっとりした相手と、欠点を補い合い良いバディになることもできます。
 あるいは、ADHD同志でも、個性や気質は違いますから「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」と、さまざまに補い合うこともできます。同じような症例を見ると、幾分冷静に自分を見ると、ちょっと間をおいて考えることもできるのです。
 会話を途切れさせないためのつもりとか、議論で勝ちたいのか、知識を顕示したいのか、人間何かと相手の話をさえぎって口をはさむ時があります。「教えてあげる」とか、「このやり方が正しい」とか、本人は悪気はなくとも、これはけっこう相手にストレスを与えます。
 前置きとか、クッションになる言葉をしっかりはさむと、だいぶマシなんですが、イントロクイズみたいに、「女優Aの話、、」「政治家Bの話、、」「最近みたドラマ〇〇、」と言うや否や自分の意見や、下手したら関連する過去の引き出しを無意識のうちに強引に開けてしゃべりだす人がいます。こうなると、ちょっとこの人何だかになってしまいます。親しい友人や、部下になら文句は言われないからと、ついこの癖が拡大し周りから人が離れる場合があります。
「傾聴」と言う言葉があるように、まず息を吸い込み、相手の話をよく聴くことは。訓練としてやれば、少しは改善できると思います。
 もちろん、多くの積極的に「来た球を反応してすぐ打ち返す」「積極的に発言や行動に出る」という、良い評価を受けることも多いので、本当に自分をよく理解し、周りにも恥ずかしがらず、少し「俺、こういう性質やからよろしく」という関係が築けたら良いのです。

いつまでも記憶に残る特撮ヒーロー、ヒロイン

 
 モノ覚えが悪くなって、最近のことでもですが、昔のことは覚えていることは少なく完璧に数十年欠落したままのこともありあす。同窓に会って聞いたい、メッセージで知り斬新なぐらいに過去のことを教えてもらうことがあるぐらいです。
 まだ覚えている詳しいのは子供の頃、見ていた特撮番組ぐらいかなと思います。
 子供時代によく見たテレビとくに特撮ものは、再放送もよくあって見ていたので覚えています。今でも動画配信やリメイク版などで当時の記憶も蘇るもので、なおさら鮮明に思い出します。

 「シン」なんとかという感じでまた映画になったりもしています。
 今でも大金をかけてリメイクされるぐらいなので、当時の子供の視聴率、世帯での視聴の割合も多かったでしょう。それでも映画やテレビの世界で一般のドラマより特撮が格下の扱いで、重要なヒロインや登場人物の俳優が他のドラマや映画を優先して急に降板するということもありました。
 ところが、今になると記録にも記憶にもよく残り、繰り返し再生され、イベントや取材もあるのは特撮ドラマで、わざわざ途中降板して優先させた方のドラマは今となってはそれ何だっけという記憶にもないものになっています。これは、特撮がオタク的な言われ方はあっても地位向上したのかなと思います。
 当時のヒロインなんて、もう70歳以上のおばあさんですが、いまだに初恋の人のように思いいれるファンが多いものです。
 なぜか、これが10代後半から20代前半で輝いていた普通のドラマの女優さんや歌手だと、老けたら「ああそう〇〇も、劣化したなあ、サヨナラ」みたいな感があり不思議です。


 出演キャストとしては男性俳優の方が多く、60代の私より年上で鬼籍に入られたかたや、相当みんなおじいさんですが頑張っている方もおられます。
 昭和の特撮ヒーローを演じた俳優さんで仮面ライダーの藤岡弘さんや、V3の宮内洋さんなどは、未だに二の線を捨てない、誇りを持ったヒーローであり続けている感じがします。
 予算も少なくCGもなく、身体を張って危険な撮影をじていた時代に、子供の夢のためヒーローであった熱い思いをいつまでも持っておられます。
 今は仮面ライダーや戦隊ヒーローの後継シリーズが若手イケメン俳優の登竜門といわれるほどになっています。それはそれで、ステータスが高くなって良いことです。

仮面ライダー 真(シン) 考察

 庵野秀明監督・脚本の「シン・仮面ライダー」が上映されました。
 同世代でややマニアックな面もある庵野さんの「シン」シリーズです。エヴァやゴジラ、ウルトラマンとそれぞれヒットを飛ばしてきましたが、仮面ライダーはやや興行的には苦戦しているようです。
 ネタバレはできるだけ避けますが、観た方も賛否両論で、相当コアなファンでないと十分には楽しめないような内容のようです。私の印象もそう、複雑です。
 仮面ライダーはウルトラマンと並ぶ私らの子供時代のヒーローであり、途中中断もありながら、平成、令和と今も続いている特撮シリーズです。もちろんご存じの方が多いとは思いますが、ウルトラマンが円谷東宝系の怪獣相手の巨大ヒーローであるのに対し、仮面ライダーは等身大で怪人を相手にする東映が制作のヒーローです。

 今となって、制作の裏話などでも伝わりますが、特撮の本家ともいえる円谷のウルトラマンに比べ、東映は予算や技術では太刀打ちできない面を役者や演出陣の工夫、根性とアクションでカバーしたと伝わります。その熱気が第二次特撮ブームで、先日紹介した「帰ってきたウルトラマン」その後の「ウルトラマンエース」あたりの時期に、等身大の「仮面ライダー」その後の「仮面ライダーV3」は真っ向からスピーディなアクションで迎え撃ち、「変身!」のブームで第二期のウルトラシリーズを上回る人気でした。
 小学生から中学になろうかというときが、この第二次特撮ブームで、第一次のウルトラマンほどの圧倒的世帯占拠はなくとも、当時の子供らは「ライダー派」と「ウルトラ派」に分かれました。

 どちらが強いかという議論は設定であり身体のサイズからして意味がないのですが、私はどちらもリアタイである時期まで見て、ウルトラマンのシリーズの巨大化というのが時にムダでリアリティを欠くと子供心に感じた面があります。実際にアクション面で敏捷さに欠けるイメージがウルトラマンの不人気な点でもあり、巨大化することでミニチュアなどの制作費もかさむため特撮巨大ヒーローは一時下火になります。東映側からは潤沢に見えた東宝円谷もオイルショックには勝てず実は厳しい予算だったのが分かります。
 ただ今回、「シンの映画」で取り上げられた仮面ライダーの初期シリーズもいろいろ矛盾やリアリティを欠くような大人の事情もあったようです。主役が本郷猛から一文字隼人に交替するのも役者の大怪我という事情を無理に脚本化しています。

 今回、「シンの映画」で仮面=ヘルメットのような感じで描かれています。特撮ヒーローの変身というのはツッコミどころ満載なのです。仮面ライダーの仮面が外部装着のヘルメットなら普段はどこに持ち歩いているのでしょう。バッタ容姿のヘルメットなら複眼状の目や触覚は装飾のようなものなのか、改造人間としてパワーを発揮できるようになる状態に変身した時、いろいろ装着するのはどういうシステムなのかと思います。ややグロテスクかもしれませんが、甲虫などの金属感は自然にもあるので身体が変身するとした方が未だにしっくり感じます。そうでないといきなり爆風を受けて変身する場合などは成り立たないような気がします。
 ベルトが身体に埋め込まれて、あとは身体が変態すると言うのがリアルなのか、宇宙刑事の蒸着や、その後の一般人のライダーシステムでの変身などは外部からの高度技術です。同時期のスペクトルマンなどは宇宙へ本人が依頼してそこからの何らかの技術で変身します。
 バイクの変形などはメカとしてはそういうものと分かりますが、相当にバックアップメンバーが要ります。
 最近の仮面ライダーは改造人間ではなく、普通の人になりました。改造人間の悩みという面では初期シリーズの踏襲は重大でしょう。コントロールしにくい魔性の力を持ってしまい、悩む苦しむ、その人外となった醜い強さを隠すのが「仮面」そうなると、かなりヒーローとしては異端です。相手がテロ組織とは言え、石ノ森さん独特の悪の組織が作った者が、裏切って孤独なヒーローになるというのですが、警察や防衛組織もない孤独な戦いでは現実的には戦い切れないのではと思います。警察と良い連携をとった平成の仮面ライダークウガやアギトなどがその点は一番納得です。アギトにはG3という警察の作ったライダーがヘルメットのような仮面をかぶり全身防具を装着しますが、元のアギトやギルスはやはり自然に仮面や身体は変身しているような描写に見えます。謎の部分です。

 どこまで行っても、ご都合な謎は残る者です。それも楽しみなのでしょう。

1976年7月 Gメン75沖縄3部作レビュー

 先日Gメン75の話を書きました、その中で沖縄3部作について詳細をレビューをそのうちと書いておりまして、ようやくDVDをじっくり見ました。

  第59話「東京ー沖縄 縦断捜査網」
  第60話「暑い南野島 沖縄の幽霊」
  第61話「沖縄に響く 痛恨の縦断」
 以下ネタバレです。
 昭和51年(1976)年7月3日から.3週続けてという、2時間半以上にわたる、オール沖縄ロケという今では考えられない映画並みのスケールであり、異色中の異色ともいえるギャンブル的な試みの力作です。タイトルだけでは60話はホラーみたいですが、完全な連続ストーリーになっています。しかも見ているものは前編とも後編とも謳っていないのでいつ終わるのかもわからないで見せられていました。
 当時の刑事ドラマ、アクションドラマは多くのレギュラーがいるものの全員が総花的に出るのではなく、それぞれ一人のレギュラーが主役になってゲストと対峙し厖大なセリフをこなすパターンが多かったのです。この3部作でいうと、シリーズ前半紅一点の響圭子刑事を演じた藤田美保子さんです。朝ドラ「鳩子の海」でデビューした背の高い女優さんですが、朝ドラ時代も子役が好評の後、当時としては大女の藤田さんは不評で、その後も今の朝ドラ女優ほどドラマ、CMには出ておられません。しかし、Gメンの女刑事はハマリ役でとくにこの沖縄三部作で、沖縄問題の奥深さを知り苦悩する役をよくこなしています。沖縄人から罵倒され、地元刑事に逮捕拘留されるわ、罠にはまり米兵に暴行寸前、犯人を逮捕するもハブに咬まれ瀕死の目、最後は逃げる米兵と銃撃線で腕を負傷しながら発砲と自ら体当たりの演技で、沖縄の悲劇を日本人の目で体現していきます。

 戦時中からの本土の日本人への恨み、異民族に支配され続けた28年の沖縄人の葛藤がいろんな場面で表れ、なかなか今の時代のドラマでは難しい表現も多くでます。
 普天間基地の周辺を舞台に、米兵に性的暴行を受けて、まともな裁判すらなく泣き寝入りとなった二人の女子高校生の家族が刑事となり、米兵に復讐を企図するところが事件のきっかけです。東京と沖縄で刑事になっている二人とその妹も含め、全員が最後には非業の運命に向かいます。Gメンたちにも沖縄の壁と、米軍の壁が立ちはだかります。

 「サインはV」で白血病のバレー少女を演じた台湾出身の范文雀さんが、自死した妹の姉役で記憶を失いながら切ない恨みの唄を披露します。
 のちに刑事役でシリーズレギュラーを果たす范文雀さんこの頃は透明で無垢な印象の美人です。
 家族の復讐を誓う刑事に、川地民夫、織田あきらさんが熱演。そして仮面ライダー初期で緑川ルリ子を演じた森川千恵子さんが暴行された後、ホステスとなる悲しい運命の女性を演じています。前半は女子高生役、後半はアバズレたホステス、そして最後はほぼすっぴんのような笑顔のない難しい役どころを見事に演じています。長い髪のキレイな美人女優さんでした。
 昭和特撮ファンは米兵とつるむずるい悪役で「キャプテンウルトラ」の中田博久が、同番組でキケロのジョーを演じた小林稔侍が刑事役で出演し、同時にテロップで出るのもニヤリとさせられます。
 
 本土復帰後も米軍の不平等な裁判、犯罪者も逃げ込む米軍基地、そして本土人を信じないで、経済は基地に依存する沖縄人の悩みと、この時点で多くの沖縄の苦しむがハードに描かれます。少しスカッとするのは、やはり丹波哲郎演じる黒木警視の米司令官への英語でのまくしたてだけです。ほとんどの関わった沖縄人を救えず、最後も苦しみぬいた響刑事の怒りの発砲は命中したのか、わからないままでエンディングです。
 

1976年高校生を熱くさせたハードボイルド

真木千恵子と織田あきら

1976年高校生を熱くさせたハードボイルド

 ハードボイルド Gメン’75 熱い心を強い意志で包んだ人間たち,このドラマ冒頭のナレーションは視聴者に強烈な印象を与えました。そのインパクトから派手なアクションを想像されますが、沖縄を描いた3部作など、今の民放の刑事ドラマでは考えられないほどシリアスに社会問題を深く彫り描いていました。

 1970年代後半、Gメン75は、TBS系土曜夜9時枠・東映製作によるアクションドラマシリーズです。この作品はとくに登場人物の葛藤や悲哀、緊張感に満ちた心理描写や、社会性を強調した重厚かつ先の読めない人間ドラマがコンセプト。特に初期は硬派なハードボイルド刑事ドラマとして製作されました。

 劇中
『米軍の武器横流し事件の主犯、マーチンが米軍基地内に匿われていることを知った故丹波哲郎扮する黒木警視は、米軍司令官と交渉すべく沖縄へ飛ぶ。』

 詳細レビューは、また後日。とにかく熱く、カッコよかった1970代。